餅とお菓子 ほんごう代表 本江 徳行(ほんごう・のりゆき)さん

とやまプレミアムストーリー vol.7

富山の食材や伝統と共にある
やさしい和菓子を多くの人にも

餅とお菓子 ほんごう代表 本江 徳行(ほんごう・のりゆき)さん

2025.05.20

富山県射水市にある餅とお菓子 ほんごうは、地元を中心に幅広い世代の人たちに親しまれている和菓子店です。同店代表を務める本江徳行さんは、祖母が営む餅店を手伝うなかで和菓子づくりの面白さに気づき、「若い人にも気軽に食べてもらえたら」という思いで、平成12年(2010年)に開業しました。妻のさなえさんと二人三脚で、地元産食材を活用した和菓子づくりや、遠方にも発送可能な冷凍商品の開発にも取り組んでいます。本江さんに和菓子や地域に寄せる思い、今後のビジョンなどについてお聞きしました。

おいしいとやさしい、両方を満たす和菓子を追求しています。

―和菓子の道に進んだ経緯をお聞かせください。
富山市内で母方の祖母が餅店を営み、子どもの頃は餅店を手伝う母に連れられてよく訪れ、和菓子づくりを身近に感じていました。就職して東京で飲食業やホテルの洋菓子部門に勤めた後、地元の射水市に戻ることになり、祖母の店を手伝うなかで、和菓子づくりの面白さに気づき、当時の自分と同じ世代の若い人にもっと気軽に食べてもらえるような和菓子をつくりたいと思うようになりました。3年ほど修業した後に独立して、2010年に射水市内で店をオープンしました。
―素材と製法にこだわっているそうですね。
地産地消をすすめたいという思いがあり、同じ射水市のアグリッチ・農園さんから仕入れる果物をはじめ、富山県産や国産の良質な素材を多く使用しています。餡炊き、生地練り、焼成・蒸成、細工などの工程はほぼ手作業で行います。祖母より受け継いだ製法に、現代の技術も取り入れながら、おいしさとやさしさをみたした和菓子づくりを目指しています。
―どのような商品を展開していますか?
どら焼き、大福、きんつば、もなか、団子など、通年商品と季節商品を合わせて常時15~20種類を揃えています。地域伝統の獅子舞にちなんだ商品を開発したり、パッケージデザインで親しみやすさを演出したり、和菓子にまつわる由来にも触れながら、多くの人々に和菓子の魅力が届けられるように、さまざまな工夫を凝らしながら取り組んでいます。

あやめ団子について

あやめ団子(写真中央)は、富山市民の間で世代を超えて愛されているソウルフードです。見た目はみたらし団子に似ていますが、味わいは異なり、黒糖を使った濃厚な黒蜜だれを絡めているのが特徴です。コクのある甘さと柔らかな団子の組み合わせが、後を引く味わいです。

―あやめ団子は、富山市の名物だそうですね。
富山市民の間では、昔から日常のおやつやちょっとした手土産として、子どもからお年寄りまで幅広く親しまれているお団子です。黒糖を煮詰めた独特のたれを絡めたお団子で、たれはわらびもちの黒蜜にも似ていますが、配合が異なり、コクがありながらもさらりとした感じの、食べやすい甘さが特徴です。富山市内の餅店や和菓子店で製造、販売されていて、祖母の店でも定番の人気商品でした。店ごとに製法や味が異なるので、市民の中にはお気に入りがあったり、食べ比べして楽しんだりする人もいます。ちなみに富山市出身の妻は、幼い頃から祖母の店のあやめ団子のファンだったようで、不思議な縁を感じました。
―製法についてお聞かせください。
祖母の作り方を受け継ぎ、団子には富山県産うるち米の米粉を使っています。富山のお米は立山連峰の雪解け水を源とする冷たくて豊かな水ではぐくまれるため、甘みとコクが強く、風味豊かでほどよい弾力の団子ができるのです。たれは沖縄県産の黒糖を水に溶かして、弱火で煮詰め、地元の老舗片口屋さんの生醤油を加えてコクのある甘さに仕上げています。大きな特徴としては、最後に本葛でとろみを付けていること。一般的には澱粉を使いますが、ここは自分のこだわりですね。口当たりが良く感じますし、たれにツヤが出ます。体にやさしい食材なので、プリンをはじめとする他商品にも取り入れています。

解凍後もおいしい黒糖だれを開発しました。

―冷凍のあやめ団子を開発した経緯をお聞かせください。
開業後しばらくして、県内のスーパーを通じて市外でも商品が販売されるようになり、認知度も次第に広まり、2018年頃には、富山のアンテナショップのバイヤーさんから、「日本橋とやま館であやめ団子とあんころ餅を販売してみないか」と、お声掛けをいただきました。団子は作ったその日が賞味期限の朝生商品(ルビ:あさなましょうひん)です。日本橋とやま館で販売するためには、冷凍状態で約1カ月保管できることが条件でした。ちまたでは、さまざまなスイーツや料理が冷凍商品化されて出回っています。将来的な販路開拓も見据えて、冷凍あやめ団子の商品化に取り組みました。
―どのくらい日持ちしますか?
冷凍状態で1カ月の保管が可能です。団子は注文にもよりますが、1週間に約800~900玉を製造します。冷凍あやめ団子は1パック8個入りで、解凍後に別添えの袋に入れた、たれを絡めて食べていただく形です。冷凍のあやめ団子は、店頭でも取り扱っています。

これからも地域に根づいて、地域とともに伸びてゆく店でありたいです。

―開業されて15年目を迎えました。お客様の反応はいかがですか?
近所の小学生がお小遣いを持って買いに来たり、女子高校生からいちご大福「苺のほっぺ」の発売時期を尋ねられたり。30~40代の方のご来店も多く、おかげさまで、お子様からご年配の方まで、幅広い年代の方にご愛顧いただき、おやつ感覚で気楽に食べられる和菓子づくりを続けてきて、よかったなと実感しています。
―最近はどのような商品をつくられましたか?
若い人を意識して考案した商品が、「うさこ最中」です。うさぎのかわいい形と、兎と免の漢字が似ていることから悪運や厄からまぬかれる、という意味も込めました。夏の季節商品では「氷苺」があります。冷凍保存しておいたイチゴに、生クリーム、マスカルポーネチーズを加えた組み合わせの妙が楽しめます。
―どのようなお店にしていきたいですか?
和菓子は、昔からお米や豆など地域の風土にあったものを素材として、季節や地域の風習とも結びつきながら発展してきました。地元農家さんをはじめ、さまざまな方との出会いや繋がりによってラインナップが増え、看板商品やロングセラーも生まれました。これからも、ロゴマークに表した稲穂のように、地域に根づいて、地域とともに伸びてゆく店でありたいと思います。
―今後、チャレンジしてみたいことはありますか?
洋菓子での経験も生かしながら、伝統と新しい感覚をかけあわせたインパクトのある和菓子をつくり、普段あまり和菓子を食べないという人にもアプローチしていきたいですね。
5年ほど前に射水市商工会を通して、台湾や中国での販路開拓事業に商品だけ出品したことがあります。現地の方に関心を持っていただけたようですが、価格が高いということで実際の取引には至りませんでした。最近は健康志向から、日本はもちろん海外でも和菓子に興味を持つ人が増えていると聞きます。海外での展開は配送にかかるコストなどハードルがいくつもありますが、チャンスがあれば前向きに取り組んでみたいですね。ご当地グルメやローカルフード等こだわりの商品をお探しのバイヤー様にぜひ富山のだんごをご紹介したいと思っています。ご要望などをお聞きしながら共に商品開発をし、販路開拓に取り組みたいです。

この生産者の情報を詳しく見るには
バイヤー登録が必要です。 ▶