とやまプレミアムストーリー vol.3

美味しさと栄養にこだわった
カラフルニンジンをもっと全国へ。

カナモリファーム 金森大祐さん

2024.01.24

富山県南砺市にあるカナモリファームは、カラフルニンジンで知られる野菜農家です。その経営を行う金森大祐さんは、2018年に南砺市へ移住し、新規就農者として研修を受けた後、2020年に独立起業。以来、味と栄養価を重視した野菜づくりに力を注いできました。その努力が身を結び、このオンライン商談サイト「とやま食材マッチング」が主催したイベントでは採用に至ったという実績もあります。そんな金森さんにカラフルニンジンの特徴やこだわり、富山県の野菜の可能性などについてお聞きしました。

野菜を作るために、南砺市に移住しました。

―ご出身は京都府とのことですが、就農にあたって南砺市に移住されたきっかけをお聞かせください。
以前は、菓子メーカーの営業職として名古屋で働いていました。お菓子は加工品なので、商談は値段の話になります。値下げの提案をしているうちに、自分で一から物を作り価値を高めて提案したいと思うようになったことが、就農を目指したきっかけです。農業を始める場所として南砺市を選んだのは、妻の実家があることに加え、「広い農地で野菜を作りたい」という思いが実現できそうだったからです。
―カナモリファームを立ち上げられるまでの経緯をお聞かせください。
2018年に妻と2人の子どもとともに南砺市へ移住し、新規就農者として研修を受けた後、空き家と1ヘクタールの農地を購入して「カナモリファーム」を始めました。最初は一人で営んでいましたが、翌年には家族経営協定を締結し、妻も就農しました。夫婦での新規就農は、南砺市では初めてだったそうです。
―地域経済の活性化を図る産学連携・発足したプロジェクト「とやま未来青果塾」にも加盟されていたそうですね。
JAなんと(なんと農業協同組合)に相談に行った時、「とやま未来青果塾」の運営に携わられていた方をご紹介されたことがきっかけで、同塾の2期生として1年間加盟し、勉強会や研修会に参加しました。おかげで、富山県内の農家さんとつながりができました。皆さん、志が高く意欲的で人柄のいい方ばかりで、たくさん刺激を受けましたね。

カラフルニンジンについて

「カラフルニンジン」とは、その名の通り、彩り豊かなニンジンのこと。カナモリファームでは、6種類の種を撒いて赤、白、黄、紫、黒、オレンジと全6色のニンジンを作られていますが、その年によって収穫量等に変化があるため、基本的には4色を販売されています。

―カラフルニンジンへのこだわりをお聞かせください。
美味しさと栄養価にこだわっています。ただ、味の良し悪しは曖昧なため、説得力を持たせるには数値化が必要と考えました。土壌分析し、さらに出来上がった野菜の分析も行って、糖度、ビタミン、抗酸化物質量などの栄養成分を数値化しています。野菜の分析をするコンテストがありまして、今年の出場者の平均値と自身が作った黄ニンジンを比較したところ、糖度と抗酸化力が平均値より高く、硝酸イオンという苦味は少ないという結果が出ました。
―栽培の特徴をお聞かせください。
土づくりに力を入れています。化学肥料と農薬は、基本的に使用していません。除草剤も使っていないため、夏場に透明のマルチを一緒に畝立てすることで、太陽の熱で土の中を殺菌し、雑草の種や病原菌を死滅させています。同時に熱に強い納豆菌や酵母菌などの良い菌を土に入れて増やしていくことで、連作障害にも強い土づくりを行っています。また、石の多い畑ですが、熱消毒をすると土が柔らかくなり、石を避けて生長してくれます。
―手間のかかる作業だと思いますが、栽培でのご苦労はいかがですか?
いろいろと手間はかかりますが、こういう栽培方法は楽しいですね。作り方が制限されている分、畝間に虫の嫌いな植物を植えるなど、いろいろと工夫できるので。今は有機栽培とは言えませんが、それに近い作り方をしているので、他との差別化を図るためにも2024年には有機JASを取得したいと考えています。

「とやま食材マッチング」の事業で商談成立。

―カラフルニンジンに対する一般消費者の方々の反応はいかがですか?
富山市にあるこだわりのスーパーマーケットをはじめ、南砺市内にある道の駅福光やAコープなんとセフレ、ふくの里農産物直売所などで取り扱っていただいていますが、「甘い、ニンジンじゃないみたい」という声をいただくことが多いですね。ニンジン嫌いの方にも「これだったら食べられる」ということで、今年もご注文をいただきました。
―B to Bというシーンにおけるエピソードがありましたらお聞かせください。
2023年9月に富山の高付加価値な食材をPRする事業「とやま食材マッチング」(当サイト)の一環として、首都圏からバイヤーの方々を招いた食材ツアーイベントがあり、私たちも参加しました。首都圏のバイヤーの方々に直接お会いして商品をPRしたところ、あるバイヤーさんと商談が進み、白ニンジンを納品することができました。納品先は、全国各地から産地直送の新鮮かつ安全な野菜を使用されている高級鉄板焼き店だったこともあり、珍しい野菜を探されていたのかもしれません。自ら能動的に動く時間がなかなか取れないため、こういうイベントはありがたいですね。そこで生まれたつながりを長く継続できたらいいなと思っています。

質にこだわることで、富山の野菜の魅力を広めていきたい。

―カラフルニンジンの他にも、どんな野菜を作られていますか?
ホウレンソウや大カブ、カリフラワー、キャベツ、サツマイモ、パプリカ、大豆を作っています。夏はハウスで小玉スイカ、ナス、トマト、ズッキーニを作りました。キャベツとカブは、配達できる範囲の保育園や小中学校の給食に使用していただいています。品目にはこだわらず、いろいろな野菜づくりにチャレンジしていますが、その原動力はお客様の「すごく美味しかった」という言葉。小玉スイカは作業が大変ですが、かなりの反響があったので、やめられません(笑)。
―富山での野菜づくりは、いかがですか?
富山県は、美味しい野菜を作ることのできる土地だと思っています。特に冬は、寒さや雪の効果によってキャベツやニンジン、ホウレンソウなど、美味しい寒締め野菜を作れるはずです。今は米作りをしていた田んぼを畑に変えていく流れがあるので、これまで野菜を栽培されていなかった米農家の方々が、こだわりの野菜づくりをスタートできるいい機会なのではと思っています。
―県産野菜について、どのような展望を持たれていますか?
富山は、魚をはじめ食べ物が美味しいじゃないですか。野菜も量より質を高めていった方が富山の魅力を発揮できると思いますし、全国の産地と戦えると思います。他県の伝統野菜に対抗するためにも、例えば一つの野菜に絞って「この野菜といえば、富山」というようなものができたらいいですよね。具体的にはまだ悩んでいますが、こだわりの上質な野菜を中量中品目で栽培し、こだわりのあるお店に納めるという形を目指すのがいいと思います。カラフルニンジンに関しては、これからも味と栄養価にこだわり、リピートしたくなるようなものを作っていきたいなと思っています。また、全国的に珍しい野菜だと思いますので、ぜひ当ファームの畑を見にいらしてください。

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