とやまプレミアムストーリー vol.4

豊かな自然にはぐくまれた美味しさ
黒部産米100%の米粉を多くの人に

SS製粉 下山和也さん

2024.09.02

富山県黒部市にある株式会社SS製粉は、平成16年(2004)の設立以来、米粉を専門に製造している会社です。同社の代表取締役を務める下山和也さんは、豊かな自然と名水にはぐくまれた地元黒部産のお米を生かして、品質にこだわった米粉づくりに取り組んできました。近年、米粉は小麦粉価格の高騰やグルテンフリーに対する意識の高まりから注目が高まっており、需要が拡大しています。下山さんに黒部米や米農家への思い、米粉に対する人々の反応、今後のビジョンについてお聞きしました。

米粉に特化したメーカーであることが強みです

―会社設立の経緯について教えてください。
米の需要が減少するなかで、国が新規需要米を使った米粉の利用促進に乗り出すことになり、当社はそのモデル会社として2004年3月9日に設立されました。日本有数の米どころである富山県の北東部に位置する黒部市は、黒部川扇状地の肥沃な土地と豊富な水によって、良質なお米がとれることで知られています。その黒部産米を生かして、2007年から本格的に米粉の製造が始まり、行政や関係団体と協力しながら、需要掘り起こしに取り組んできました。
―設立から20年、一貫して米粉のみを製造されていますね。
米粉を扱う工場が全国に数多くある中で、米粉に特化したメーカーであることが、強みの一つになっています。小麦粉をはじめとする他の原料が混じらない環境で製造された米粉ということで、お客様により安心して使っていただいています。
―ここ数年、第2次米粉ブームと言われるほど、米粉の需要が高まっていますね。
2009年頃の第1次米粉ブームは、価格や当時の製粉技術の問題などから需要が伸び悩み、私が社長に就いた2015年頃は業界全体の生産量が激減して、当社も先行きが見えないほど低迷しました。転機の一つは円安やウクライナ情勢によって、小麦粉の価格が世界的に高騰し、代替品として米粉が注目されたことがあります。それと、小麦アレルギーやセリアック病、体調管理の一環としてグルテンフリーを求める方が増えたことが影響しています。

黒部産米へのこだわり

平成19年(2007)8月に、お米として全国初の地域団体商標(地域ブランド)として認定された「黒部米」。SS製粉では、黒部産コシヒカリを100%使用した米粉を作り、自社商品として販売しています。

―黒部産米へのこだわりをお聞かせください。
山や海などの自然に囲まれた黒部市は、黒部川水系のきれいな水に恵まれており、黒部川扇状地湧水群は「全国名水百選」に認定されています。その湧き水で育ったコシヒカリは、粘りと、冷めてもしっかりとした甘みがあることが特徴です。その美味しさは、全国的にも有名なブランド米に勝るとも劣りません。とりわけ黒部市農業協同組合(JAくろべ)を通して出荷されるお米が地域ブランドの「黒部米」です。米粉にはほぼ一等米を使用しています。原料から品質にこだわった米粉を通して、美味しい黒部のお米を広めたいという思いがあります。

デンプンの損傷を抑えて、きめ細やかな米粉に

―貴社で採用している湿式気流粉砕とは、どのような方式ですか?
精米したお米を一旦水に浸して、軟らかくすることで、デンプンの損傷を抑えながら、300mesh(メッシュ)のきめ細かい米粉に仕上げる製粉方式を北陸で唯一導入しています。細やかな米粉は水分バランスが良く、使いやすいという利点があります。水に浸した後、脱水して一定時間寝かせる、お米の中心まで水を浸透させる工程をテンパリングといい、米粉の品質を左右する大変重要な工程になります。熟練スタッフが天候や気温により最適な条件を設定して行っています。
―米粉の安全性や品質管理も徹底されていますね。
食品メーカーとして異物混入や衛生には細心の注意を払い、徹底した管理を行っています。異物検査は精米後に高精度な機械で異物を見つけて除去する以外にも、製粉ラインでも3回にわたって検査します。最後は袋詰めの後にも、最終検針作業を兼ねて金属探知機をかけます。もしこの段階で反応したら、その日のロットすべてを廃棄しますが、幸い工場操業以来、そのような事態が起きたことは一度もありません。機械内部は毎日稼働後に約3時間かけて、機械を分解したうえで隅々まで清掃しています。
―製粉工程で排出されるヌカも有効利用されているそうですね。
米ぬかは業者を通して、米油や飼料、肥料となり、余すところなく再利用しています。製粉時の選別で除かれた米粉も、地元の養豚業者さんが買い取り、飼料用として活用されています。

黒部の米作りを絶やさないように

―現在の主な出荷先について教えてください。
黒部産米を使用した自社商品は20kg、5kg、1㎏袋、200gの計4種類があり、それぞれ企業や製菓、製パン業者、県内の学校給食やスーパーマーケットなどに向けて出荷されます。2023年の出荷量は300tを数え、自社商品のほかに委託製粉・精米も行っており、引き合いが増えています。先日は無農薬米粉の製造依頼があり、新たな需要の広がりを実感しました。
―セブンイレブンが貴社の米粉を、田んぼごと契約されたそうですね。
セブンイレブンさんとは昨夏からお取引が始まり、当社の米粉を気に入って、工場に視察に来られた際に田んぼごと契約されました。今秋、西日本地区のセブンイレブン約6,000店舗で、当社の米粉を使用したスイーツが販売されることが決まっています。農家の方も喜ばれると思います。
―これからの米粉需要に期待することを教えてください。
現在、大手食品メーカーとともに米粉麺の商品開発に携わっています。製粉技術の向上で化粧品など新たな分野への活用も広がっています。米粉の需要は国内だけでなく、今後海外市場にも広がる可能性があり、期待が膨らみます。一方で、きれいごとかもしれませんが、私がこの米粉事業に携わっているのは、米離れを解消して、今の子どもたち世代が大人になったときを見据えて、食料自給率の向上に貢献したいという思いがあるからです。これからも美味しい黒部のお米をアピールしていくとともに、黒部の米作りを絶やさないように、力を尽くしていきたいと考えています。

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