【販路開拓塾】
第11回<展示会・商談会 準備編>
ターゲット、利用シーン、画像掲載のポイント

2025.2.28

今回は展示会や商談会での商談で、成約を勝ち取るための商談スキル・絶対に話しておくべき内容について具体的に説明します。

商談は売り込み半分、ヒアリングが半分

基本的に展示会は立ち話、個別商談会も時間が20分〜30分(なかには10分という商談会も)と限られています。この限られた時間の中でバイヤーに対して、自分や商品をいかに印象づけるかが大事です。
だからと言って、一方的に話し続けるのは感心しません。というのも、商談時間の半分が売り込み(会社紹介・商品提案)、残り半分が「どうしたら棚に置いてもらえるか? 取り扱ってもらえるか?」というヒアリングだと今まで述べてきました。
例えば商談時間が20分であれば、会社の説明約3分、商品の説明約7分、ヒアリングが残りの約10分なのです。
このヒアリング時に、第2回目の「商品開発と販路開拓のループ」で説明した、「商品A が作れるのなら商品B を作れませんか?」「商品B が作れるのであれば商品C ができない?」といった〈売れるためのヒントをもらう〉のです。

この時、当たり前のことなのですが、筆記用具を持参して必ずメモを取るようにしましょう。
第9回目の「"作るプロ" が "売るプロ" に売り込む準備」でお話しした通りバイヤーは、接客(お客様)と商品(知識・専門性)をとても大切にしています。メモを取っていないということは、“大事な情報を記憶できるのか?” “そもそも相手の話を聞き流しているのではないか?“と悪くとらえられかねません。

“宿題をもらって返事の期限を約束しよう!”

こうして商談を進めていると、商談時間はあっという間に過ぎてしまいます。ここで、商談の最後に言ってはいけない一言があります。

■商談の最後に言ってはいけないひと言

それは、「じゃあ、何かあったらお願いします」という無駄なお願いです。というのも、その“何か”は起きるのでしょうか? おそらく自分から“何か”を起こさない限り、何も起こらないはずです。
では、生産者(メーカー)の方が商談の最後に「じゃあ、何かあったらお願いします」と言ってから1週間後に、バイヤーに対してフォローアップの電話をかけてみたとします。
おそらく多忙を極めるバイヤーは不在にしていることが多く、生産者は“自分の売り込みのために折返し電話をもらうのは悪い”と思い、「また私の方からかけ直します」と伝言を残します。でも、折返し電話のお願いをしている訳ではないので、バイヤー側から電話がかかってくることはありません。
これを2回、3回、4回と繰り返していると、生産者側(メーカー)は“流石にしつこいと思われているのではないか。じゃあ、もういいか”と諦めてしまうのです。

■宿題をもらって、返事の期限をバイヤーと約束する

一方で、私がおすすめするのは〈期限を決めて宿題をもらう〉ということです。つまり前述の「商品A が作れるのなら商品B を作れませんか?」という宿題を必ずもらって、「今月末に商品Bをつくるので提案させてください」とお返事の期限を決めてバイヤーと約束するのです。
そして約束の月末、商談相手のバイヤーに電話をすると、多忙を極めるバイヤーは不在にしていたとします。この時、“自分の売り込み目的”ではなく“バイヤーとの約束を守るという目的”であれば、以下のようにお願いすることができます。

「今日はお約束していた商品Bのご提案でお電話を差し上げました。ご在席のお時間を教えていただければ改めてお掛け直しさせていただきますし、もしもご不在が続くようであれば大変申し訳ございませんが折り返しお電話を頂戴しても宜しいでしょうか?」
つまり、“自分の売り込み目的”ではなく“バイヤーとの約束を守るという目的”であれば、折返しの電話もお願いしやすくなるのです。
ある大手商社のバイヤーが「5個宿題を出して5個返してきたら、もうその商品は扱わざるを得ない」と言っていました。5個宿題を出して5個返したということは、バイヤー・生産者(メーカー)間の人間的信用は築けていますし、商品もその商社向きに仕上がっているはずです。
「商品A が作れるのなら商品B を作れませんか?」という宿題は、期限を決めて約束することで、次のフォローアップに繋がる“攻めの一手”でもあるのです。

筆者紹介『バイヤーズ・ガイド』編集発行人 永瀬 正彦

筆者紹介
『バイヤーズ・ガイド』編集発行人
永瀬 正彦

経歴 昭和61年に慶應義塾大学経済学部卒業後、株式会社リクルートに入社。求人情報誌の編集を経て、平成4年に独立。平成20年に、食品を作る人と買う人を結び、最終的に消費者と結びたい。そして地域と消費地を結びたいという思いから、『バイヤーズ・ガイド』を創刊、編集発行人に就任し現在に至る。日本全国を自らの足でたずね歩き、各地域の方々と出会い、地元の食をいただき、販路開拓のお手伝いをするのが至上の喜び。現在、中央省庁や地方自治体の各種審議会委員や有識者としてアドバイザーを務める。