【販路開拓塾】
第3回 販路開拓で重要な「ターゲットと利用シーン」
2024.09.03
【販路開拓塾】3回目は、販路開拓を行っていく上で重要となるターゲットと利用シーンについて説明します。ターゲット・利用シーンと聞いて難しく考えてしまう人もいますが、シンプルに考えます。ターゲットはズバリ “こんな人に” 、利用シーンは “こう食べて欲しい” です。
ターゲットは具体的に “どんな人なのか?”
最初にターゲットについて説明しましょう。バイヤーに商品を見ていただくと、必ず「この商品のターゲットは?」と聞かれます。生産者の方からは「お子様からお年寄りまで男女を問わず」や「首都圏の高所得者層」といった答えが返ってきます。
ここで注意すべきは、ターゲットの日本語訳が “標的” だということです。そうなると、「お子様からお年寄りまで男女を問わず」は全ての人が対象になってしまいますので、ターゲットになりません。次の「首都圏の高所得者層」も、その方々に売りたい気持ちはわかりますが、では「首都圏の高所得者層とはどんな人たちでしょうか? 説明してください」というと大体答えられません。残念ながら顧客イメージができないものは売れないのです。
そこで仮説でも良いので、以下のように具体的にターゲットを設定してみてください。
ここでなかなかターゲットの設定ができない、イメージできないという方は、自分の商品を売りたいお店の置きたい売り場に行ってみましょう。すると、どんなお客様が、どんな価格帯で、どのような商品を買っているのか? 具体的にイメージできるようになります。
ここで立てたターゲットの仮説を、商談時にバイヤーにぶつけてみてください。もしも違うようであればアドバイスをもらい、修正してみて再度提案していくのです。このターゲットの設定検証を繰り返していくうちに、ターゲットの設定が定まってくるはずです。
ターゲットに “どのように利用して欲しいのか?”
次に利用シーンですが、先ほどのターゲットの方々にどのように利用して欲しいのか? 以下のように5W1Hで考えてみましょう。
バイヤーはこのターゲット・利用シーンが、自分たちのお客様と合っているかどうかを検証します。
先ほど首都圏の高所得者層というターゲットがありましたが、簡単に考えると、こうしたお客様が百貨店や高級スーパーでお買い物をするのであれば、ありふれた商品ではなく原材料や製法にこだわった商品を求められます。一方、日常使いのGMS(総合スーパー)や地元スーパーであれば、リーズナブルな価格で欠品を起こさない量が求められます。
小売店ごとに独自のストア・コンセプトがあり、 どのお店でも通用する商品というものはないのです。
筆者紹介
『バイヤーズ・ガイド』編集発行人
永瀬 正彦
経歴 昭和61年に慶應義塾大学経済学部卒業後、株式会社リクルートに入社。求人情報誌の編集を経て、平成4年に独立。平成20年に、食品を作る人と買う人を結び、最終的に消費者と結びたい。そして地域と消費地を結びたいという思いから、『バイヤーズ・ガイド』を創刊、編集発行人に就任し現在に至る。日本全国を自らの足でたずね歩き、各地域の方々と出会い、地元の食をいただき、販路開拓のお手伝いをするのが至上の喜び。現在、中央省庁や地方自治体の各種審議会委員や有識者としてアドバイザーを務める。