遊水会 代表 安倍久智さん

とやまプレミアムストーリー vol.6

美味しいますの寿司を作り続けて、
富山の良さを多くの人に伝えたい。

すしいち亭オーナー、寿司一2代目 川住 由美(かわずみ・よしみ)さん

2025.03.30

富山駅近くにあるすしいち亭は、2016年に開店した押し寿司の製造・販売店です。「棒ます寿司」で知られる富山市八尾の「寿司一」の姉妹店で、寿司一2代目の川住由美さんがオーナーを務めています。寿司職人の父が作り上げてきた味や製法などを大切に受け継ぎながら、多くの人々にその美味しさを届けたいという思いで、新たな商品開発やイベント出店など、さまざまな挑戦を続けています。そんな川住さんに、寿司づくりに寄せる思い、商品に対する人々の反応、今後のビジョンなどについてお聞きしました。

「棒ます寿司」で知られる寿司一の姉妹店です。。

―すしいち亭について教えてください。
富山市八尾にある押し寿司製造・販売店の寿司一の姉妹店で、2016年に富山駅近くでオープンしました。寿司一を創業した父は、この道60年の寿司職人。私は子どもの頃から店に出入りして、家族として手伝うなかで、父が作り上げてきた寿司一の味を一代で終わらせるのはもったいないと思っていました。そんなとき、今のすしいち亭に繋がる出店話が浮上して、私が2代目としてその店を営むことになりました。
―寿司一についてお聞かせください。
父は金沢で修業を重ね、1974年に出身地の魚津で『松寿司』を開店しました。その10年後に母の郷里である八尾に移り住み、1989年に富山駅前で押し寿司販売店の『寿司一』を構えました。押し寿司は一見簡単そうですが、握り寿司よりも作るのが難しいと言う職人さんもいます。分厚い身と酢飯が絶妙に合わさった、握り仕立ての「棒ます寿司」が人気を博し、今に続くロングセラーになりました。その後、地元百貨店内を経て、製造拠点のあった八尾に移り、現在も多くのお客様にご愛顧いただきながら、両親が切り盛りしています。
―どのような商品が人気ですか?
看板商品の「棒ます寿司」が一番人気です。棒寿司はほかに炙ります、焼き〆サバ、バイ貝とおぼろ昆布などがあり、ご自宅用やちょっとした手土産に購入される方が多いです。観光客やお土産用としては、富山ならではの丸い木桶に入った「厚身のますの寿司」を選ばれる方が多いですね。

「厚身のますの寿司」について

「厚身のますの寿司」は、富山名物の木桶に入った丸型のます寿司です。ます寿司は店ごとに特徴がありますが、「棒ます寿司」をもとにして作られた、このます寿司は、身の厚さとトロリとした食感が大きな特徴で、まろやかな酢飯が味わいを引き立てます。

―「厚身のますの寿司」が生まれたきっかけについて教えてください。
「棒ます寿司のような厚身の丸型ます寿司があったら良いのに」というお客様の一言がきっかけでした。父と家族で早速、試作を開始。2000年頃から販売を始めました。ます寿司は店によって身の厚さ、酸味、酢めしの柔らかさなどに違いがありますが、当店の寿司の特徴は、ダントツの身の厚さとトロリとした食感、ふんわり感のある酢めしです。その味に魅了されて、リピーターとなるお客様が多いです。ハラスの部位のみを使った「特上」も作り、2種類を展開しています。
―商品化にまつわる苦労はありましたか?
ますの寿司は、木桶の底に笹を敷き、特製酢などで〆た魚の切り身を並べ、酢飯を詰めて、笹を折って包み込み、重石をして作ります。魚の厚身を生かすためには、ご飯の量が多すぎてはいけませんし、少なすぎても魚の味が出過ぎてしまいます。容器のサイズは決まっているので、厚身にマッチする酢めしの量を探るのに、手間が掛かりました。
―味や素材へのこだわりを教えてください。
当店のます寿司の特徴は何と言っても”厚身の魚”です。分厚く切った魚を使用し、食べごたえを感じて頂きつつ、その寿司の断面からも厚身を見ていただけるよう押し加減にもこだわっています。酢めしには細かく刻んだ生姜を挟み、脂ののった魚の旨味を引き立てながらもさっぱりとした味わいに仕上げています。常に厳選した素材のみを使用して、安定した味と品質を保っています。地元契約農家さんから仕入れる富山県産コシヒカリを使い、まろやかで優しい味わいに仕立てた酢めしは当店の味を支える柱であり、これからも大切にしていきたいです。

冷凍寿司を開発し、消費期限が拡大

―冷凍寿司を開発した経緯について教えてください。
当店のますの寿司や棒寿司を県外に送りたいというご要望を以前から多くいただいていたのですが、鮮度保持や日持ちの関係でお送りできないケースがほとんどでした。10年ほど前に業者を通じて冷凍寿司の開発を試みたのですが、解凍すると酢飯がパサパサになり味も変わってしまうため、半ば諦めていました。本格的に着手したのは2018年頃。鮮度を封じ込めるという急速冷凍技術に出合い、試作の末、解凍後も作りたてと変わらない味を提供することが可能になりました。これなら全国発送のニーズにも応えられると考え思い切って導入しました。
―冷凍寿司は何種類ありますか?
ますの寿司2種類と、棒寿司は棒ます、炙り棒ます、焼き〆サバ、ばい貝とおぼろ昆布、煮穴子、エンガワの6種類を常時揃えています。鮮度の保持がネックとなっていたバイ貝の棒寿司も長期保存が可能となり、単品だけでなくセット商品も作りました。
―保存期間や解凍方法について教えてください。
家庭用の冷凍庫なら約2カ月、マイナス20度を超えるような業務用冷凍庫なら約半年の保存が可能です。召し上がるときは、自然解凍で室温に4~5時間ほど置いていただくと、できたてと同じ味の寿司を味わっていただけます。

味や製法を大切に受け継ぎながら、新しいニーズにも応えていきたい。

―すしいち亭がスタートして8年、お客様の反応はいかがですか?
「代替わりして味が変わってしまった」と言われないように努めてきて、お客様から「美味しかった」という反応をいただくと、安心しますね。富山駅近くの立地なので、人づてに聞いて訪ねてくる観光客や、出張帰りに立ち寄られた県外のビジネスマンなど、さまざまなお客様との出会いがやりがいに繋がっています。私の発案で父の了解を得て商品化した「バイ貝とおぼろ昆布の棒寿司」も富山らしいと好評で、定番になったことも自信になりました。
―チャレンジしてみたいことや商品はありますか?
イベント出店すると、ペットの犬を連れたお客様から、犬も食べられるます寿司を作ってほしいという声をよくいただきます。我が家にも愛犬がいますので、家族同然の愛犬と食べ物をシェアしたいという気持ちがとてもわかります。人も犬も安心安全に楽しむことができる、ます寿司をいつか実現させたいですね。
―受け継いできたものをどのように発展させていきたいですか?
もっと多くの人に食べてもらえるように、様々なニーズにお応えしていけたらと思っています。冷凍での長期保管が可能ですので、お取り扱い時のロスになりにくい事と、解凍も簡単である事を活かし、全国の飲食店様でのメニューに使っていただいたり、スーパー様のお弁当コーナーで販売していただけると嬉しいです。美味しいます寿司を通して、富山の良さを全国に伝えるお手伝いができたらうれしいです。

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