
【販路開拓塾】
第9回 <展示会・商談会 準備編>
"作るプロ" が "売るプロ" に売り込む準備
2025.2.10
今回は展示会や商談会に参加する前の準備についてご説明します。
まず皆さんは「展示会や商談会の会場の場で成約が決まる!」と思って参加していますか?
その場で成約が決まれば良いのですが、【販路開拓塾】第1回目で紹介したように、展示会の成約見込み率は約5%、商談会の成約見込み率は事業者指名型で約30%、バイヤー指名型で約60%となっています。
目的は“キッカケづくり”。商談がスタートする“出会いの場”
まず大前提として覚えていて欲しいのは、基本的に展示会・商談会のその場で商談は成約しません。あくまで商談がスタートする“出会いの場”と思ってください。
お見合いに例えると分かりやすいのですが、お見合いで初めて会ったその日に結婚は決まりません。最初の出会いからお付き合いが始まって、お互いの価値観や理想の家族像を確認しあって、両者に婚姻の決心がついた時に結婚が決まります。
展示会や商談会も同様で、会場での初めての出会いから商談がスタートし、お互いが求めるイメージや取引条件を確認し合い、両社が取引を決心した時に商談は成約します。ゆえに、初めて展示会や商談会に参加する方は意気込んだりせず、肩の力を抜いて臨みます。
そして展示会の成約見込み率が約5%であれば、単純計算すると100枚名刺を交換すれば成約見込みは約5件、200枚名刺交換すれば成約見込みは約10件と、商談成約の可能性は増していきます。そのため、1人でも多くのバイヤーと名刺交換をして、自らチャンスを創り出すことが大事です。
抽象表現ではなく、数字で論理的に語ろう!
そして展示会・商談会ともに、“今回はどのような目的で、どの商品を売り込みに来たのか?”相手に伝わるようにコンセプトを決めてください。その上で、商品の魅力や特徴を伝える時は、数字で語るようにしましょう。
というのも、例えば日本全国の栗農家の方は皆さん口を揃えて「うちの栗は大きくて甘い」と言うのですが、これだけでは相手に伝わりません。一方、「通常の栗の重さは20g だけど弊社の栗は40gある。糖度は最高26 度でメロンより甘い」と言われた方が、その大きさ・甘さは具体的に伝わります。
また「美味しい・旨い」といった表現も同様で、バイヤーはその「美味しい・旨い」を実現している製法やこだわりについて知りたいのです。抽象表現ではなく、数字で論理的に語るようにしましょう。
模擬商談(ロールプレイング)で商談をシミュレーション
また本番で慌てないよう商談会当日まで予行演習はしっかり行いましょう。
おすすめは模擬商談(ロールプレイング)を行うことで、社内で片方がバイヤー役、もう片方がサプライヤー(生産者・メーカー)役をやります。時計を横に置いて時間を計りながら試してみてください。
模擬商談が終わったら、バイヤー役が商談の感想やアドバイスをサプライヤー役に伝えます。続けて、バイヤー役とサプライヤー役を入れ替えて繰り返し行うのです。
サプライヤー役は通常の立場なので大丈夫かと思いますが、なかなか難しいのはバイヤー役です。もしもバイヤー役で困ったら、“この商品どうしたら売れるかな?”という視点で相手に質問をしてみてください。バイヤー役でこの質問を繰り返しているうちに、自然とバイヤー視点が身についてくるのでとても有効です。
最後にバイヤーは小売の方なので、“モノを売るプロ”です。みなさんは“モノを作るプロ”なのに“モノを売るプロ”に売り込まないといけないのです。
小売の方は接客(お客様)と商品(知識・専門性)をとても大切にしています。つまり、商談にのぞむあなたの接客(服装・言葉遣い)や、商品(知識・モノ作りの熱意)に対する姿勢もしっかりチェックされていることを忘れずに。

筆者紹介
『バイヤーズ・ガイド』編集発行人
永瀬 正彦
経歴 昭和61年に慶應義塾大学経済学部卒業後、株式会社リクルートに入社。求人情報誌の編集を経て、平成4年に独立。平成20年に、食品を作る人と買う人を結び、最終的に消費者と結びたい。そして地域と消費地を結びたいという思いから、『バイヤーズ・ガイド』を創刊、編集発行人に就任し現在に至る。日本全国を自らの足でたずね歩き、各地域の方々と出会い、地元の食をいただき、販路開拓のお手伝いをするのが至上の喜び。現在、中央省庁や地方自治体の各種審議会委員や有識者としてアドバイザーを務める。