バイヤーインタビュー vol.1

日本百貨店の名物バイヤー日暮さん
伝えたい「売り手企業へのメッセージ」

2023.09.27

株式会社日本百貨店  日暮 学 さん

「ニッポンの百貨をおもしろく。」というココロザシを胸に、日本全国からこだわりの食品や雑貨をセレクトし、都内を中心に複数の実店舗を構える日本百貨店様。 仕入の責任者であり、全国を飛び回り日本の“スグレモノ”を日々探している統括バイヤーの「日暮 学(ひぐらし まなぶ)さん」にお話を伺いました。

─ まず、日本百貨店様についてお聞かせください。

2010年に創業した、日本全国からこだわりの食品や雑貨をセレクトしたお店です。現在は、都内に3店舗、あわせると全国で7店舗を運営しています。日本百貨店のコンセプトというか、根幹・存在意義というところになるかと思うのですが、「日本のものづくりにお金を回す」という想いで元々お店を立ち上げています。

─ 2020年に創業10年目を迎えられ、あわせてリブランディングを行われたんですね。

今でもそのコンセプトは変わらずに運営をしていますが、ちょうど創業して10年経ち一区切りということで、リブランディングはタイミング的にもいいかなと……。


元々うちが創業した2010年に比べると、今は似たようなセレクトショップが多くなってきたじゃないですか。当時はうちみたいなお店はなくて新しかったので、それだけで差別化できていたというか。一つ「日本百貨店」っていうのがブランドとして確立されていたんです。


ですが、この10年で結構時代も変わり、今や日本のいいものとかメイドインジャパンの商品を扱うお店が結構増えてきていているように思えていて。

デザインも切り口も打ち出し方も、“いろいろ”あるのが面白い

─ リブランディングされてから2年ほど経過されましたが、社内外での変化はありましたか?

そうですね。どちらも変化はありましたね。

社内的にはちょうどリブランディングした時期は新旧メンバーが混在している中で、“日本百貨店って一言で言ったらなんだろう”っていうのがなかなかみんな言えない状況で。リブランディングしたことによって、皆で明文化された一つの共通認識を持てたので、進んでいく方向が見えやすくなった気がします。

でも、どちらかというと社外での変化の方が結構大きくて、特にWebサイトの反響が大きかったです。リブランディングをきっかけに、「ニッポンの百貨をおもしろく。」というコンセプトに沿ってデザインを含めて色々と刷新したのですが、サイトを見た事業者さんや自治体さんからの出店依頼がすごく増えました。
ブランディング前までは地方のものを“そのまま”売るということが多かったんです。でも、“こういう風に日本百貨店の切り口で販売したらよりよく売れるようになるんじゃないかな?”と、我々が編集して発信することをすごく意識するようになりました。


最近はPB商品も増えてきていて、商品の割合も2020年には全体の1~2%だったのに対して、現在は20%くらいまでに増えました。商品数としては200~300商品はあると思います。

いいモノで生活を豊かに。
コロナ禍でも売れた商品

─ コロナの影響で店舗での商品の売れ方に関しては変化がありましたか?

そうですね、お土産品の色が強い商品はかなり落ちましたね。その代わりに“自分へのご褒美”のような「ちょっと値段は高いけど、物がいいモノ・質がいいモノ」が動く傾向にありました。

─ “自分へのご褒美”商品というと、例えばどのような商品でしょうか?

ちょっと高めのスイーツは人気ですね。あとは前より自炊する人が多くなったのか、自家需要としての調味料も若干動いているような気がします。“今まではスーパーのナショナルブランドのお醤油を使っていたけれど、ちょっといい木桶の醤油を買ってみようかな”というような方が増えているのかもしれません。

あとは家飲み時間が増えている=お酒自体の消費が増えているため、アテとしてのおつまみ商品もちょっと上がってきていますね。

─ 今までとは違った商品を手に取られるお客様も増えているのですね。この流れは2023年現在も続いているように感じますか?

そうですね、今も続いているかなと思います。買い物需要として、今は“本当に美味しくて必要なもの”、“素材がいいもの”という商品のニーズが高いように感じますね。

キーワードは「ひと手間」!?
自家需要商品の中でも売れているものとは

─ 先ほどコロナ禍でも売れた商品についてお伺いしましたが、具体的な商品はありますか?

ちょっと前の冬に売れたのが「サムゲタンのキット」。それもめちゃくちゃ売れました!

サムゲタンって1から作るのは面倒くさいじゃないですか。僕もなかなか作ろうとは思わないですし、材料をそろえて買うくらいなら、値段的にも時間的にも食べに行ったほうがいい(笑)

だけどこのキットにはナツメとか玄米とか雑穀とかスパイスとか……そういうのは全部入っていて、あとはスーパーで手羽元だけ買って30分から1時間程度煮込めばOK!簡単にサムゲタンができますよ、というキットなんです。

それがすごく売れたのって、先程の話に通じますが、開けて湯煎するだけとかチンするだけではない絶妙なラインで「ひと手間」を加えて自分で作っているところがちょうど良いのかなと。日本百貨店ではよく売れた人気商品でしたね。

─ 「自家需要」や「ひと手間」がキーワードになっているんですね。

※サムゲタンの商品イメージ(日本百貨店webサイトより)

─ 今探している商品や、次はこれが来るのでは?と思っている商品はありますか?

うーーん……売れる商品が欲しい(笑) ……というのが前提で「特徴がある商品」を基本的には探していますね。もちろん美味しさも前提として欲しいのですが、他にはない商品、面白さ・切り口が新しい商品といった、「個性がある商品」がいいですね。東京ではあまり見ないとか、都会的ではなくてもいいので面白さがある商品を常に探していますね。

─ 地場では有名だけど、まだ東京ではなかなか知られてない、みたいな商品でしょうか?

パッと思い浮かばないのですが、地方に行くと“それ、そんな食べ方するの!?”っていう食べ物がたまにあったりするじゃないですか。お雑煮とかでも全然違いますよね。僕は関東の人間なので、京都だとお雑煮には白味噌を使用する、とかそういったものは面白いなと感じます。商品というよりは、なんか地方性があるというのかな。そんなところを僕としては面白いと思ってひとつの切り口として商品を探していければ良いなと思っています。

─ 商品のトレンドから探したりもされますか?

あまりしないですね。逆に“トレンドに左右されない商品”を多く探しているかもしれません。もともと日本百貨店が『日本のモノづくり』に注目してはじまった会社なので、その商品がどのように作られたかという“ストーリー”や“想い”に共感できるかという方を見ることが多いです。トレンドももちろん考慮はしますが、そこは自分たちの切り口である“編集”の部分やイベントで補う形にして、本来の商品の良さを引き出していきたいなと思っています。

地域産品はトレンドではなく“個性”を大切にしてほしい。

─ 商談時に「日本百貨店」もしくはバイヤーである日暮さんが考えている商品の“見極めポイント”はありますか?

まずは「こだわり」。“この商品の一番のこだわりポイント”や“どうこだわっているのか”、“それはどこが他社さんと違うのか”、“どういった思いを持っているか”など、そういった部分はまず聞きますね。よく突っ込んで聞いています。なんとなく美味しい、とかだと取扱を決めるには少し弱いので。“これなら他社さんには負けない”といったポイントをよく聞いて、引き出すのが商談の仕事かなと思っています。

仕入れの基準としてよく使う表現としては「人に語りたくなるかどうか」。誰かに伝えたくなるような商品の推しポイント・強みを持っているかは、見極めポイントかもしれません。

─ 「人に語りたくなるかどうか」。とても大事なポイントですね。前の質問と重複する部分もあると思いますが、商談の際にメーカーさんに何を一番伝えてほしいですか?

やはり「こだわり」ですね。“この商品で1番ここを推したいんです”とか“こういう思いで作っています“とか、“ここは他社さんには負けません”とか。究極そこだけですね。なんでもいいと思うんですよ。その種類は問わないので、そこが何かというのを知りたいですね。極端に言ってしまえば、味だけではなくて、自分自身のキャラクターとかでもいいですよ。自分はこんな人です!みたいな(笑)

─ 一緒に商品売っていけるような生産者さんとお付き合いしていきたいということでしょうか。

もちろんそうですね。思い出しました必要な条件「人が良い」って言う(笑)絶対必要ですね。

モノだけのお付き合いではないので、やっぱりその作り手さんと一緒に僕たちもしっかり売っていきたいですし、作り手さんにも参加して欲しいなって思いがあるので、一緒に進んで行ける人かな?とか、そういう部分は見ますね。

─ 日暮さん個人としては、今後はどのようなにお仕事をしていきたいですか?

今までとあまり変わらないかもしれないですけど、全国にたくさんいる“しっかりモノを作っているんだけど、なかなか売れない”とか、“その伝え方に苦労している”とか、そういった埋もれている商品・生産者さんたちのモノを、切り口を我々で作ってあげたりとか、発掘してあげたりとか、そういったことはしてあげたいなと思っています。

何か‟してあげたい”というと、上からみたいな感じで語弊があるのですが、“売ってあげたいなあ”っていう商品がまだ各地にあるので、そういったものを見つけて、売っていけたらいいなと思っています。

─ 最後に富山県の生産者の皆さんにメッセージをお願いいたします!

変に型にはまらないでほしいなと思っています。先ほどもちょっと話が出ましたが、この業界では“トレンド”とかあったりするじゃないですか。1つ流行るとみんな同じような商品が出てくることがあると思うのですが、みんながそれをしてしまうと同じような商品が全国で出来てしまったりするんですよね。特にそのような商品を作る事業者さんって、真面目な方がとにかく多くて。多分『こうやって、こういう風に作りなさい』みたいな指導が入っていると思うんですよ。

なので、言われたとおりに作ってみるけど、そうするとみんな横並びのような商品が全国的に出ていることをよく見るので、それだったらいっそ、もともと持っている個性みたいなものを大事にしてほしいなあと思います。さっきのお雑煮の話じゃないですけど、『東京に持って行くので醤油ベースにしました』って言ったら、“それはちょっと違うんじゃない?”ってなると思うんですよね。なので、そういった“個性”は大事にしていってほしいと考えています。富山には美味しい食材がたくさんあります。そして皆様の商品にもこだわりや想いがたくさんあると思います。ウチはこれだけは他社に負けない、これには自信があるなど。そこが皆様の強みだと思いますので、余すことなく伝えて欲しいです。僕たち日本百貨店はそんな商品を求めています。

─ 貴重なお話をありがとうございました。