

とやまプレミアムストーリー vol.8
富山県産食材と県外企業のマッチング
いみずサクラマスを結婚式のテーブルに
THE NANZAN HOUSE 料理長 長谷川 喜紀さん
堀岡養殖漁業協同組合 養殖チーム リーダー 酒井 克典さん
2025.08.26
結婚式という人生の特別な一日に、料理が果たす役割は非常に大きいものです。そんな一面を大切に思い、富山県の豊かな自然が育む食材を用いて、記憶に残るウェディングを届けようと取り組んでいるレストランがあります。株式会社Plan・Do・Seeが運営する唯一のウェディング店舗「THE NANZAN HOUSE(ザ・ナンザンハウス)」の長谷川シェフは、富山の食材に以前から注目していたそうで、今回、縁あって出会った『いみずサクラマス』とのエピソードをうかがいました。
- ―まずは、食材の可能性に魅了された長谷川シェフの姿勢をうかがいました。
- 長谷川シェフ「THE NANZAN HOUSEは、名古屋の閑静な住宅街にある「邸宅」のようなウェディング会場です。自然が多く、会場を囲むあふれるような緑で、外との境界をほとんど感じさせない素敵な会場です。」
https://www.nanzanhouse.com/
長谷川シェフ「会場と同じく、豊かな自然をイメージさせるビジュアルと、当館の歴史やモダンな雰囲気を兼ね備えたお料理を提供し、当館の魅力を一層引き立てたいと考えています。新郎新婦(主役のお二人)に楽しんでいただくことはもちろん、ゲストの皆さまにもお料理に満足してもらえるような結婚式にしたいですね。多くのお皿が並ぶ贅沢なテーブルは、見た目の華やかさも演出できます。盛り付けは、都会的というより、少しやわらかい印象が伝わるようにハーブ等を使った季節のあしらいにこだわっています。お料理の温度やお出しするタイミングにもこだわり、出来立てを提供しています。見た目から香りや味、温かさなど五感を使って楽しめるお料理を提供することで、結婚式場の空間や雰囲気そのものの価値を高め、たっぷりの自然を感じていただけるようなプレゼンテーションになると考えています。
長谷川シェフ「お料理のことをもう少しお話すると、私自身の取り組みとしては、素材本来の味や魅力を引き出し、それを活かす一皿を提供することを常に考え最善を尽くしています。当館で提供するお料理は、季節に合った日本全国にあるおいしい食材を使ったものを提供したいと考えています。現在は、千葉や佐賀、当館近くですと愛知・岐阜などから食材を取り入れています。」
鰆の炙り 秋茄子(山口県産 鰆、愛知県産 秋茄子)/フルーツとブラータチーズの白和え (岐阜県産 柿)
甘エビ ズッキーニのタルタル (北海道産を予定 甘エビ)/ 茸のフリット 生ハム (秋田県産 茸 舞茸 生ハム)
- ― 昨年、社内で行われたその土地の素晴らしい生産者と食材に出会う旅、「ご馳走旅」にて富山を訪れた長谷川シェフ。富山では、新湊や氷見の漁港、黒部ヤギチーズなど様々な食材と生産者に出会い、富山の食材と人の素晴らしさに触れるきっかけになったそうです。
旅の後も取引を続ける中、今回検討している養殖の『いみずサクラマス』と出会われました。天然と養殖と、それぞれの魚に異なる魅力に改めて気づき、養殖魚の価値をもっと上げたいと感じたそうです。 - 長谷川シェフ「天然と養殖とはよく比較されますが、それぞれの特色があると感じています。確かに天然魚の価値はありますが、養殖魚も遜色ない味を表現しているうえに、漁獲量が安定し安全性が担保されている食材は貴重です。お料理としても、調理次第で様々な楽しみ方ができます。」
- ―また、『いみずサクラマス』生産者である堀岡漁協・酒井さんも同じ考えで生産に取り組まれています。酒井さんにとっての『いみずサクラマス』の魅力をたずねました。
- 酒井さん「『いみずサクラマス』は、今は大半が県内出荷となっていて、主にお寿司屋さんで提供されています。最近では、県外から求められることも多くなってきて、それに対応できるよう尾数を増加させる努力を重ねています。採卵からの稚魚育成や給餌の仕方にも細部に渡りこだわっています。エサの均一化や衛生面など、質の良いサクラマスが平均的に育ちやすくなっています。寄生虫の心配がないとされる養殖魚は、衛生面での安全性の評価が高く、計画的な生産が可能なため安定した供給が見込めます。こうした養殖魚の魅力を感じていただける店舗等で、『いみずサクラマス』を味わっていただきたいと感じています。」
- ―どんな食べ方がお勧めでしょうか。
- 酒井さん「水揚げ後の食感が良いので、ぜひ生で味わっていただきたいですね。捌いた時の鮮やかな色みや脂のり、いきの良い弾力など、自慢でもある良質なサクラマスを食べてもらいたいです。サクラマスはクセが少なく、生食に限らず幅広い食べ方ができて、アレンジもしやすい食材です。また近年、熟成魚の人気が高まっていまして、いみずサクラマス』の熟成魚も開発されています。サクラマスのエラと内臓を除去して腹と背の水気を取り、空気に触れないよう冷蔵保存して寝かせます。脂の乗り具合を見極めながら、最長で25日ほどかけて丁寧に熟成されたものもあり、料理人のこだわりや感性によって”熟成サクラマス”が使われることもあるそうです。熟成されたサクラマスは、旨味が凝縮され口の中で広がるような食感が特徴です。最近では鮮魚と熟成魚の味の違いを楽しめる機会も増えてきています。」
- ―長谷川シェフに現在考案中の『いみずサクラマス』を使ったお料理をこっそり教えていただきました。
- 長谷川シェフ「『いみずサクラマス』は、今回はごはんもので提供をしたいと考えています。〆の逸品として、熱々の土鍋ごはんに、サクラマスを半生の状態で入れ、余熱で火を入れることで魚の脂とごはんが絶妙になじんで、おいしさが一層引き立つのではないかと想像を膨らませています。山椒で香りを調えて、上品に召し上がっていただきたいですね。」
- ―長谷川シェフの発想について、堀岡漁協・酒井さんに伝えてみたところ……
- 酒井さん「そうなのですね! 土鍋ごはんのお料理ですか。確かに、サクラマスはクセが少ないので多様な食べ方でお楽しみいただけます。長谷川シェフのように、いろいろなアレンジしていただけるのは非常に興味深いです。養殖の方法もいろいろ試して、給餌の仕方を工夫したりしてより良いものを鋭意開発中です。ありがたいことに、仕入れたいという要望を多数いただけているので、今後は出荷尾数を増やして出荷先も増やしていけたらと考えています。」
- ―……と、お互いに食材の魅力が発揮できる場に期待を膨らませていらっしゃいました。
- 長谷川シェフ「今回富山に行って、可能性を感じる食材がたくさんあると感じました。当社は「THE NANZAN HOUSE」のような結婚式場のほかにも、席数を絞った小さなレストランもあるので、収穫量に応じて、富山の素敵な食材をお勧めしています。私自身、引き続き富山の生産者の方々との関係を深めていまして、今後の展開も楽しみです。」
- ―こうした生産者とバイヤーの出会いから、素材そのものの魅力と、魅力をさらに活かしたアイデアとが響きあって食材の魅力や価値が増していきます。とやまの食材が、県外の多くの方々に楽しんでいただける機会が増えていくよう支援してまいります。