【販路開拓塾】
第2回 商品開発と商談のループ
2024.08.15
【販路開拓塾】の2回目は、販路開拓の基礎知識についてです。 まず質問です。皆さんの食材や加工品はバイヤーが喉から手が出るほど欲しがっていて、すぐにでも売り場に並べたい商品だと思いますか? もちろんそうであれば良いのですが、苦戦している方も多いのではないでしょうか。でも、これは皆さんの商品が悪いわけではありません。
商品とバイヤーの“間”を見直そう!
では何が悪いのか? 簡単な図で説明しましょう。図の赤丸が私で、私は何故か右側の緑丸 Xさんのことが大嫌い。
でもよく見ると、私に友達A・友達B・友達C がいるように、Xさんも同様に友達a・友達b・友達c がいます。さあ、ここで “人間” という漢字を頭の中でイメージしてください。私と同じようにXさんにも友達がいるということは、どうやらXさんという “人” が悪いわけではないようです。
これは “人間” という漢字の下の字 “間”、そう私とXさんとの “間” が悪いのです。この“間”を良くすることで、私とXさんの距離を近づけていこうというのが基本の考え方です。
これをみなさんの販路開拓に置き換えても同様の図になります。皆さんは商品A・商品B・商品C を持っている。一方、バイヤーは、毎日買いに来てくれるお客様a、ギフトで利用するお客様b、特売で利用するお客様cなどというようにお客様イメージを持っています。
バイヤーが皆さんの商品Aを見た時、「お客様aが買うかな?」「お客様bが買うかな?」「お客様cなら買ってくれるかな?」という視点で商品をチェックします。もしも、ここでお客様a・お客様b・お客様c の誰も買わないとなると、残念ながらここで商談は終わってしまいます。
商談は売り込み半分、ヒアリング半分
ここで今回の重要ポイント “バイヤーは同じ商品を欲しがらない” ということを覚えておいてください。というのもバイヤーは商品Aを見た時、「商品Aが作れるのなら商品Bを作れませんか?」「商品Bが作れるのであれば商品Cができない?」などと聞いてきます。
それは何故か? そう、商品を変えることによって、バイヤーが持つお客様a、お客様b、お客様cが買ってくれるからです。
商談会ではついつい売り込むことに集中しがちですが、実は売り込みが半分、ヒアリングが半分なのです。でも難しく考えないでください。まったく違う商品を作ってくださいということではありません。
具体的には、「今ある内容量を半分にして価格を500円以下にできませんか?」「現状のパッケージングだと百貨店ギフトに向かないので仕様を変えてくれませんか?」といった“売れるためのアドバイス”とも言える提案なのです。
宿題を返し続けることで、売れる商品に近づいてく!
今まで展示会や商談会で商品を売り込んでみて、バイヤーからのNGで商談を終わらせていませんでしたか? 皆さんはモノを作るプロですが、バイヤーはモノを売るプロです。展示会や商談会では商品が売れるためのヒントを、モノを売るプロであるバイヤーから引き出すことが重要なのです。
展示会や商談会はあくまでキッカケづくりです。このキッカケをもとにバイヤーからの要望(私は宿題と呼んでいます)をもらい、商品を見直しブラッシュアップしていく。これを私は“商品開発”だと考えています。そしてブラッシュアップした商品を再度提案して、また宿題をもらう。これを私は“販路開拓”だと考えています。
この商品開発と販路開拓のループを回し続けることによって、バイヤーが望む商品と現状のギャップがどんどんなくなり、最後にピッタリはまる。この時、商談が成約した瞬間になります。
さあ、皆さんも商品開発と販路開拓のループを回していきましょう。これを繰り返すことによって、皆さんの商品は売れる商品に近づいていくはずです。
筆者紹介
『バイヤーズ・ガイド』編集発行人
永瀬 正彦
経歴 昭和61年に慶應義塾大学経済学部卒業後、株式会社リクルートに入社。求人情報誌の編集を経て、平成4年に独立。平成20年に、食品を作る人と買う人を結び、最終的に消費者と結びたい。そして地域と消費地を結びたいという思いから、『バイヤーズ・ガイド』を創刊、編集発行人に就任し現在に至る。日本全国を自らの足でたずね歩き、各地域の方々と出会い、地元の食をいただき、販路開拓のお手伝いをするのが至上の喜び。現在、中央省庁や地方自治体の各種審議会委員や有識者としてアドバイザーを務める。