富山の食材
西瓜
入善ジャンボ西瓜
平均重量は15〜18kg、重いものだと30kgにも及ぶ日本一大きなスイカとして知られる「入善ジャンボ西瓜」。大きな楕円形で、長さ約40センチ、直径は約30センチ。巨大さを誇る一方で、ラグビーボールのような形と、鮮やかな縞模様に愛嬌があります。果肉はみずみずしく、上品な甘さがあり、サクッとした歯ごたえと甘い香りが特長です。7月下旬から8月上旬が"旬"で(収穫は8月中旬まで)、贈答品として全国へ出荷されます。
ジャンボ西瓜の産地である入善町は、黒部川が形成する扇状地にあります。この地は、地下に豊富な伏流水を含み、扇端部ではそれらが自噴して黒部川扇状地湧水群を形成しています。入善ジャンボ西瓜は、北アルプスに端を発する黒部の清流を大きな体いっぱいに吸い込んで、その甘い香りと味わいで、暑い夏に爽やかな潤いを届けてくれます。
改名とともに躍進
黒部川扇状地は水はけが良く、西瓜栽培に適しているため、室町時代から西瓜が栽培されていたといわれます。明治10年頃、より甘い品種を求める消費者の声にこたえ、大型で楕円形の実をつけるアメリカ産の「ラットルスネーク種」が黒部市の荻生村で栽培されはじめました。この品種が扇状地の土壌に適していたため生産が拡大し、間もなくして黒部川対岸の入善町に広がりました。当初は「荻生西瓜」と呼ばれましたが、生産の拡大にともない「縞皮(しまかわ)すいか」と呼び名が変わり、さらに明治42年に当時の皇太子(後の大正天皇)が来県された際に、黒部川の清流にちなんで「黒部西瓜」と改名されました。
大正から昭和15年頃まで、黒部川流域一帯は日本一の西瓜産地として名声を高めました。なかでも入善町は黒部西瓜の中心産地に成長し、朝鮮やロシアへ輸出するなど活況を呈しました。しかし戦時中の作付転換や、消費者の嗜好が丸玉西瓜へ移行したことなどが影響し、大正期に96haあった農地が昭和40年には8haに激減しました。昭和57年、地元生産組合は黒部西瓜から「入善ジャンボ西瓜」と名称を変えて奮起します。消費者の甘味志向に適応するため、交配選抜による努力を重ねた結果、従来品に比べて甘みがあり、病気に強く、形が良いなどの特長を兼ね備えた新しいジャンボ西瓜の育成に成功。これにより、大きいのに甘さがある、今日の入善ジャンボ西瓜が誕生しました。
平成30年は約4.1haの作付面積で13戸の農家が生産を行い、約151トンのジャンボ西瓜が出荷されています。
より大きく、より甘く
入善ジャンボ西瓜は、他の西瓜に見られるような接ぎ木栽培ではなく、種から育てた自根で栽培されます。そのため連作を避け、一度収穫した畑は10年間使われません。また、ひとつの株にひとつだけを実らせるために余分な芽はこまめに摘まれて、栄養を集中させます。大きく、そして甘く実るジャンボ西瓜は、このような生産農家のたゆまぬ努力の結晶なのです。 これらの努力が実り、入善ジャンボ西瓜は特許庁の地域団体商標(地域ブランド)に認定されました。平成19年2月の登録は、富山県内第一号です。
入善ジャンボ西瓜は、現在も糖度の改良などの品質向上が進められています。地域団体商標の取得により、ますます知名度の上がった「入善ジャンボ西瓜」は、今後もさらなる成長が期待されています。
地理的表示(GI)保護制度に登録
平成29年12月、農林水産省により「入善ジャンボ西瓜」(申請者:みな穂農業協同組合、生産地:入善町)が地理的表示(GI)【登録番号 第53号】として登録されました。 富山県内では初めての登録となります。
地理的表示(GI)保護制度は、地域で育まれた伝統と特性を有する農林水産物・食品のうち、品質等の特性が産地と結び付いており、その結び付きを特定できるような名称(地理的表示)が付されているものについて、その地理的表示を知的財産として国に登録することができる制度です。平成29年12月の登録状況は58件で、主な登録産品には、神戸ビーフ(兵庫県内)、夕張メロン(北海道夕張市) などがあります。
GIに登録されることで、①基準を満たす生産者だけが「地理的表示」を名称として使用可能となる、②GIマークにより他の産品との差別化が図られる、③不正使用が発見された場合に農林水産省が取締りを行う、などのメリットがあり、今後ますます「入善ジャンボ西瓜」の発展が期待されます。
※GI制度の詳細については、農林水産省のホームページをご覧ください。
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/
大きな体を包み込む「さん俵」
入善ジャンボ西瓜は、出荷される際に「さん俵」と呼ばれる稲わらの編み物に包まれます。これは、重い西瓜が傷つくのを守るためのもので、稲わらを縦30〜35センチ、横20〜25センチの楕円形に編み上げて、西瓜の上下にわら縄で縛り付けるものです。西瓜自体の大きさもさもさることながら、このさん俵に包まれてわら縄で縛られた様子が、ジャンボ西瓜特有の高級感を演出しているといえます。
このさん俵を編むのも、生産農家の仕事です。作業は西瓜の収穫を終えた秋からはじまり、雪の季節まで続きます。西瓜を育てるだけではなく、このような苦労があってはじめて、大きく甘い入善ジャンボ西瓜が食卓に届けられるのです。
お問合せ先 0765-74-2440(みな穂農業協同組合営農企画課)
DATA
旬の時期
- 1月
- 2
- 3
- 4
- 5
- 6
- 7
- 8
- 9
- 10
- 11
- 12
主な生産地
- 入善町、富山市
お問い合わせ先
入善ジャンボ西瓜
みな穂農業協同組合
入善町入善3489-1
朝日西瓜
富山市婦中町青果物出荷組合朝日支部
富山市婦中町友坂489
【入善町】嶋先 良昭(しまさき よしあき)
入善ジャンボ西瓜
長期にわたり作業の効率化や新品種の栽培に取組んでいる。 防除作業や運搬作業が機械化するのに伴い、作業機械が圃場に入れるように畝立ての方法を工夫するなど、作業の効率化に積極的に取り組むとともに、消費者ニーズに応えるため、新品種の栽培を常に行っている。 また、積極的に栽培技術指導に取組むなど、新規組合員の確保にも大きく貢献している。
【富山市】松田 久男(まつだ ひさお)
朝日西瓜
昭和27年頃から栽培に取り組んでおり、生産したスイカは、糖度14~15度、皮の近くでも11~12度の甘さがあり、全国各地から注文を受けている。 甘さの秘密は、完熟した製品を売るという方針のもと、スイカが着果してからの平均気温を記録し、積算気温が1000℃に達した時点で収穫している。 ほとんどのスイカは、庭先と通信販売でさばききれるため、スーパー等の店頭に並ぶことはなく、「幻のスイカ」と呼ばれている。 また、朝日西瓜出荷組合長を務めるなど組合の中心的役割を担っているほか、毎年、地区の小学校・保育園にスイカの無償提供を行ったり、中国からの留学生を下宿させた縁で、中国でスイカに技術指導を行うなど、栽培技術の牽引者として活躍している。