富山の食材
ブリ
シーズン到来を告げる「ブリ起し」
師走の空に激しい雷鳴が鳴り響くと、浜は「ブリが来るぞ!」と活気づく。北西から強風が吹きつけ、海が荒れ、地元の人々が「ブリ起し」と呼ぶ地鳴りのような雷が鳴り響くと、いよいよブリシーズンがはじまる。
ブリは12月から翌年の1月にかけて、シベリア寒気団とともに北海道沖から南下する。佐渡沖を通過してから約1週間後、能登半島に行く手を遮られるようにして、ブリが富山湾に入り込む。激しい荒波を乗り越えてやってきたブリは、富山湾へたどり着く頃に最も脂が乗り、味が鍛えられているのだ。
出世魚で縁起がいい
ブリは成長とともに呼び名が変わり価値が上がるため「出世魚」と呼ばれる。春先に九州西の東シナ海でふ化した稚魚「モジャコ」は、対馬海流に乗って日本海沿岸へ出て、夏に体長20cmほどの「ツバイソ」(県西部では「コズクラ」)に、秋には体長35~40cmの「フクラギ」に、翌年の冬に体長60cmほどの「ガンド」に成長し、3年目の冬にはじめて「ブリ」と呼ばれる。その頃には、体重10キロ前後に成長している。回遊する先々でも呼び名が異なり、それらをあわせると名前が100以上あるといわれる。
ブリの出世は、水揚げされた後も続く。富山湾で獲れたブリは塩ブリにされて、「越中ブリ」という名前で飛騨高山へと運ばれる。さらに野麦峠を超え、「飛騨ブリ」として信州松本や諏訪地方へ運ばれる。どちらの地区でも、ブリは縁起物として正月の食卓に並べられる習慣があるのだ。こうして、ブリは名前を変えながら値打ちを上げる、まさに「出世魚」なのだ。
ブリは捨てるところがない
富山には、ブリを使った様々な郷土料理がある。脂がのった部位は、やはり刺身で味わうのが一番おいしい。その他の部位も、余すところなく味わえるのがブリの魅力だ。「フト(内蔵)」はなます、「カマ」は塩焼き、「アラ」はブリ大根など、全身が料理の食材として使われる。「ブリは捨てるところがない」と言われる由縁だ。また塩漬けしたブリとかぶらを麹に漬けて発酵させる「かぶらずし」は、ブリ料理の奥深さを知る郷土料理だ。
ぶりにまつわる神事や風習
射水市の加茂神社(旧下村)には、ブリにまつわる珍しい正月行事がある。これは、氏子が家内安全を願って塩ブリを供え、神事のあとに切り分けられた塩ブリを各家庭で食べることで、1年の無病息災を祈るもの。古来から伝わる伝統行事で「鰤分け神事」と呼ばれる。
また、海沿いの町を中心に「ブリの半返し」という風習が残る。年の暮れに、嫁の実家から嫁ぎ先にブリ1匹を丸ごと贈り、受取った家はブリを半身にして嫁の実家に返すという「つけとどけ」の習慣だ。このように、富山にはブリにまつわる神事や風習が今も残されおり、古来からブリと人々の暮らしが密接に結びついていたことがうかがえる。
DATA
旬の時期
- 1月
- 2
- 3
- 4
- 5
- 6
- 7
- 8
- 9
- 10
- 11
- 12
主な生産地
- 氷見市、射水市、富山市、魚津市
お問い合わせ先
富山県漁業協同組合連合会
富山市舟橋北町4-19