富山の食材
さといも
栽培のはじまりは江戸時代
富山県では南砺市と上市町が主なさといもの産地として知られています。その中でも、南砺市山野地区は歴史が古く、専勝寺農帳によると萬治年間(1660年頃)にさといも栽培の記録が残っています。また、南砺市焼野地区では、享保5年(1720年)に加賀藩より種いもが譲渡され栽培が始まったと言われています。
南砺市の焼野と山野の両地区は、どちらも庄川とその支流の堆積によって形成された扇状地にあり、豊富な用水と水はけに優れた土壌です。この地域ならではの土壌と気候が、南砺産さといもの粘りの強さと柔らかさを育んでいます。
「土まんじゅう」で種芋を保存
南砺市山野地域は、種いもの産地として知られています。秋に収穫されたさといもの一部を翌年の種いもとして出荷するため、種いもを山のように積み重ね、それに土、もみがら、こも(わら)で覆って、貯蔵して種いもが腐ったり芽が伸び過ぎないように保管します。冬の雪原にこんもりと盛られた雪山は「土まんじゅう」と呼ばれ、冬の風物詩として親しまれています。種いもだけでなく、山野産のさといもは「ふる里いも」というブランド名で販売され、主に贈答品として人気があります。
粘り強く甘みが特長
焼野地区南野尻里芋生産組合で生産される焼野産さといもんぼ特長は「粘り強く、柔らかで甘みがある」ことです。さといもは収穫された状態で、表面に土を付着させたまま保存されるのが一般的ですが、この地区では収穫して間もないさといもの土を取り除き、天日干しにするのが特長です。表皮を充分に乾燥させることで、実に含まれる水分が守られるというわけです。
南野尻里芋生産組合では、11戸の農家が、約10ヘクタールでさといもを栽培しており、9月からの3ヵ月間で毎年約80トンを出荷。焼野産をあらわす「まるや」のブランドで、農産物直売所「旬菜(しゅんさい)市場・ふくの里」や地元のスーパー、農家の軒先などで販売されます。
転作で栽培がはじまり特産化
上市町では、昭和40年代から転作作物としてさといもの栽培がはじまり、町をあげての特産化が図られています。栽培の中心となる上市町広野地区は、排水性と通気性に優れた肥よくな黒ボク土に恵まれており、さらに耕畜連携による堆肥を十分に与える自然にやさしい農法を取り入れ、独特の粘り気と甘さがあるさといもが栽培されています。生産農家は年々増え、現在は60戸ほどの農家が約12ヘクタールでさといもを栽培し、「つるぎさといも」というブランドで出荷しています。
南砺市は8月末から、上市町は9月上旬から、ともに早生品種として栽培される「石川早生」の出荷がはじまります。主力品種である「大和」に変わるのは10月上旬以降。それから年末にかけて最盛期となり、生産地のブランドを背負った各地のさといもが、家族の食卓を賑わせます。
さといもを使った郷土料理
栽培の歴史が長い南砺市では、さといもを使った郷土料理が受け継がれています。おはぎのような俵型をした「いもがい餅」はもち米と一緒に炊き上げたさといもをすりこぎでつぶして団子状にして、きな粉や小豆あん、すり胡麻などをまぶしたものです。皮を剥いて茹でたさといもを串にさして、柚子味噌などをつけて食べる「さといも田楽」や、ひじきと調理した「いり煮」なども親しまれています。また、ネタにさといもを使った「さといもコロッケ」が開発されるなど、新たな郷土料理も生まれています。
DATA
旬の時期
- 1月
- 2
- 3
- 4
- 5
- 6
- 7
- 8
- 9
- 10
- 11
- 12
主な生産地
- 砺波市、上市町