富山の食材
甘エビ
甘エビの分布
生で味わった時のとろけるような甘さから、その名がつけられた「甘エビ」。正式には、「ホッコクアカエビ」といい、鮮やかな赤色の殻で全身が覆われていることから、地域によっては南蛮エビ(新潟県)、赤エビ(山形県)など、いくつか呼び名があります。
ホッコクアカエビは、若狭湾以北の日本海北部沿岸からオホーツク海、ベーリング海、カナダ西岸までの北太平洋に棲息する文字通り「ホッコク」のエビで、水深約200〜700mほどにかけての水温が低い深海で棲息しています。沿岸からわずか10〜20km付近で、海底が1,000mの深さにまで達する富山湾は、漁場が極めて近く、そのため鮮度が保たれたまま食卓へ運ばれます。「甘エビ」と呼ばれる理由となったとろけるような甘さが堪能できるのも、富山湾ならではの地の利があってこそなのです。
甘い身に満ちる満点の栄養
甘エビは、年間を通して、かごなわ漁や底びき網漁で漁獲され、特に水温が低下する晩秋から春先にかけての時期が旬と言われます。中でも鮮度が良く、真っ赤な殻と灰緑色(又は)灰青色(個体により差がある))の卵を抱えたメスは、その見た目に加え、ねっとりとした身と卵の食感から、ひと際おいしいとされ、珍重されます。
甘エビの甘味は、その身に含まれるグリシン、アラニン、プロリンといった甘みを呈する遊離アミノ酸が多いことによります。この他、身には、ビタミンEや高脂血症や肝機能の改善作用があると言われるタウリンが比較的多く含まれています。また、殻には、カルシウムやキチンが多く、唐揚や天ぷらで丸ごと食せば、これらの成分を摂取できることから、甘えびは美味しいだけでなく栄養面からみても貴重な食材と言えます。
不思議な生態と富山湾の地形
甘エビは、成長の過程で性転換する、不思議な生態をもっています。ふ化してからの2、3年間にはオスとして成熟し、ふ化後4〜6年目の春に性転換が起きます。それから寿命を迎えるまでをメスとして過ごし、子孫を残します。寿命は11年ほどで、3回ほど産卵するとされています。卵を抱いたメスは、水深200〜300mの浅い場所へ移動し、稚エビを放出します。
甘エビは、かつて日本海域が氷河期だった頃の生き残りとする説があります。北アルプスの雪解け水が海底へ流れ込む富山湾は、深海の海水温度が極めて低く、そのため、氷河期が終った後でも生き残ることができたというわけです。
富山湾が氷河期と同じ環境を残し、当時と同じ生態を甘エビが受け継いでいるとすれば、あの甘さがますます神秘的なものに思えてきます。
天然の甘さは「生」が一番
甘えびは、「生」で食べるのが最も一般的。甘くプリッとした食感を楽しむためには、一尾を丸ごと、刺身や寿司としていただくのが最適です。
家庭料理として昔からある調理法に、味噌汁があります。殻から甘く良質なダシがでて、味噌汁の風味がまろやかになります。また富山ならではの食文化を反映して、昆布でしめた「昆布じめ」として味わうのもおすすめです。甘さはそのままに昆布の風味が加わり、保存状態がよくなることから、近年は人気が高まっています。
DATA
旬の時期
- 1月
- 2
- 3
- 4
- 5
- 6
- 7
- 8
- 9
- 10
- 11
- 12
主な生産地
- 富山市、射水市、滑川市、魚津市
お問い合わせ先
富山県漁業協同組合連合会
富山市舟橋北町4-19