食べる有名人が教える
富山自慢の味

立川志の輔 インタビュー

昆布〆から見えてくる、
富山の昆布や魚への想い

富山と言えばやはり外せないのが「鮮魚」。
漁師町である新湊出身の落語家・立川志の輔さんに富山の食についてお話を伺いました。

美味しく食べてもらおうという
工夫がすごい

高校生まで富山で暮らし、今も年に一度富山出身の芸人たちで行う公演「越中座」の座長を務めるなど、“東京に住みながら富山と同居している感じ”という落語家・立川志の輔さん。漁師町で生まれ育った彼は、学生時代、東京の魚が食べられなかったという。

志の輔
学生が行くような居酒屋で、漁師町育ちの人間が納得できる魚はまず出てこないじゃない。だから友人には魚嫌いで通していました(笑)。

その後、落語家になって様々なお店へ行くようになり、東京の“魚”を口にするようになる。

志の輔
東京のお店は新鮮な魚を手に入れるのが難しい分、どうにかして美味しく食べてもらおうという工夫がすごいと感じました。富山は捕ったばかりの魚をすぐに食べられるので、素材がいい分余計な工夫はいらないんですよ。

今でも食べると懐かしく、
幸せな気持ちになります

そんな志の輔さんが富山の食の中で、昔も今も好んでよく口にしているという料理がある。

志の輔
富山の名物は、鱒寿司やかまぼこなど色々ありますが、その中でも昆布〆(こぶじめ)は、幼い頃からいつも家にあって食べてきたので、今でも食べると懐かしく、幸せな気持ちになります。

昆布〆は、魚の刺し身などを昆布で巻き時間をおくことで、昆布の旨味や塩味を素材へ加えるという富山の郷土料理だ。幼少時代、家では余った刺し身を昆布〆にして翌日食べていたため、保存食としてとらえていたのだとか。

志の輔
大学時代に、富山に帰省して飲みに行ったお店でメニューとしての昆布〆に出会いました。保存のためではなく、新鮮な魚を昆布で〆てあって、得も言われぬ旨さがありましたね。そのまま食べても十分新鮮なのに、あえて昆布で〆るというのが、富山のすごさだと思います。

実は沖縄県を抜いて昆布の消費量が日本一の富山県。そして新鮮で美味い魚。昆布〆はまさに他県では成立しない富山ならではの料理とも言える。

志の輔
全国に広がってはいますが、まだ知らない人もいます。富山以外の方にどこかで昆布〆を見たとき、これは富山の料理なんだって思ってもらえたら、それだけで嬉しいですね。

落語家立川志の輔(たてかわしのすけ)

1954年 富山県射水市(旧新湊市)生まれ
1983年 立川談志門下へ入門
1989年 にっかん飛切落語会奨励賞受賞
1990年 文化庁芸術祭賞、とやま賞芸術文化部門を受賞し、立川流真打ちへ昇進

その後も富山県功労賞、文化庁芸術選奨文部科学大臣賞など数々の賞を受賞。落語公演のほか、テレビやラジオへの出演、本の出版など幅広く活躍中。