グルメ特集

Vol.38

「ます寿し」

寿司といえば、富山

美味しい水で育ったお米や新鮮な魚介類に恵まれる富山県の寿司文化。
富山県では「寿司」をきっかけに富山への関心を高め、富山を訪れたいという方々を増やすための「寿司といえば、富山」ブランディングプロジェクトを展開しています。富山県には握り寿司だけでなく、多様なスタイルの「寿司」が地域の特産品として愛されています。
今回はその中から、お土産や駅弁として富山の定番ともいえる「ます寿し」をご紹介します。

食べ比べたくなる、
富山の郷土料理
「ます寿し」

「ます寿し」とは

昔ながらの竹の曲げ物の器に、笹に包まれた薄紅色のますの切り身が美しい「ます寿し」。
全国的にも愛されていますが、店舗ごとに様々な味わいを楽しめるのも、その魅力のひとつです。とろけるような厚い鱒の身のものや、お酢が利いたもの、ごはんの炊き方、塩加減などにも、それぞれのお店が守り続けてきたこだわりが詰まっています。富山の風土が育んだ、ひと口ごとに忘れられない味わいを、ぜひ一度食べ比べてみてはいかがでしょうか。

なぜ富山の特産品として
定着したのか

ます寿しのルーツは江戸時代、富山藩士が将軍様へ献上した「鮎の鮓(あゆのすし)」にあるといわれています。幕末ごろ、富山市内を流れる神通川へ春に遡上してくる「サクラマス」を鮎の代わりに使ったところ、その美味しさが評判となり、現在の「ます寿し」の形が定着しました。良質な富山米と、淡泊な鱒(ます)が調和したその味わいは、県民から長く愛されるようになり、国鉄構内で駅弁として販売されたことをきっかけに、富山を代表する旅のお供として、全国へと広がっていきました。

「ます寿し」
おいしさの秘密とは

Point 01
職人たちのこだわり

ます寿しの主役ともいえるお米や鱒、それを包む笹の葉はもちろんですが、その製法も様々です。酢の甘み・酸味、ご飯の炊き上げ方、鱒の塩加減や厚み、大きさ、盛り付け方、漬け込み時間など、職人の手加減ひとつで、その味わいが変わるのも富山のます寿しのおもしろさ。白えびやブリ、昆布などを添えた遊び心のある一品から、変わらない伝統の味まで。富山のます寿し職人たちが、一つひとつ、心を込めて押し仕上げたそれぞれの美味しさをお楽しみください。

Point 02
美味しさを保つ、温度管理

ます寿しの美味しさは、しっとりとした鱒の身とふっくらとした酢飯との調和にあります。
旨みのバランスを保つために大切なことは、15℃〜25℃での徹底した常温管理です。お客様が包みを解いた時に「最高のひとくち」になるように、四季折々の厳しい気候の中でも、変わらぬ美味しさを提供しています。

生産者インタビュー

今回は、富山ます寿し協同組合の活動にも尽力されている株式会社吉田屋鱒寿し本舗の3代目 吉田 正寿さんの、ます寿しづくりへの想いを紹介します。
ます寿しへの想い

職人の手仕事が生む、
鱒の肉厚でジューシーな旨み

特にこだわっているのは、職人の手による「魚の切り出し」です。生の状態で厚みを持たせて包丁を入れる「手切り」だと、噛みしめた時に鱒のジューシーさをより感じていただけます。また、季節や天候によって、鱒の状態は毎日変わります。その微妙な変化を見極めながら、塩や酢の加減を調整して、一年中変わらない美味しさをお届けすることも大切にしています。

「1日目の柔らかさ」は、
地元だけの特権

ます寿しは、時間が経つほど味が馴染んで美味しくなりますが、富山を訪れた人だけが味わえる「1日目の柔らかな味わい」もまた、地元富山ならではの贅沢だと思います。食べ方は人それぞれの好みで楽しんでもらえたらと思いますが、より美味しく味わうためのコツとしては、笹に包んだまま、まな板の上に移し替え、押すように切ってみてください。手が汚れにくいだけでなく、身が崩れずきれいに切れます。少し大変かもしれませんが、そうすることで鱒のしっとりさが残り、笹の清々しい香りまで一緒に味わっていただけると思います。

伝統を新しい姿で、
次世代へつなぐ

富山では知名度の高い「ます寿し」ですが、全国的にみると「まだ食べたことがない」という方もいらっしゃいます。地元富山の魅力をもっと伝えられるよう、食べやすい棒寿しタイプや、昆布、梅しそを使った変わり種など、手にとっていただきやすい商品づくりにも力を入れています。何よりも、「美味しかったから、また買いに来たよ」などのお声や、口コミを見て足を運んでくださることが、日々の励みとなっています。ます寿しは、これからも残していかなければならない、富山の大切な食文化です。一人でも多くの方に、ます寿しの奥深い色んな味を知っていただけたら嬉しいですね。

富山ます寿し協同組合について

とやまの「ます寿し」文化をつなぐ、
富山ます寿し協同組合

富山市内にある12店舗が加盟する、富山ます寿し協同組合では、富山県のブランディングプロジェクト「寿司といえば、富山」や富山市の「すしのまち」とやまに欠かせない「ます寿し」の魅力発信に力を入れて取り組んでいます。各店舗の自慢の味を楽しめる「食べ比べセット」の販売イベントや、富山市立公民館などでの「ます寿し作り体験教室」などを、開催しています。体験教室では、材料の手配から準備まで、加盟店が力を合わせて運営し、ます寿し作り体験を通じて、地域のみなさんに伝統の味とます寿しの魅力をお届けしています。

笑顔があふれる、
ます寿し作り体験教室

2025年は、原料の鱒が不漁に見舞われ、材料費の高騰も重なる大変厳しい一年でした。しかし、そんな時でも「富山の食文化を絶やしたくない。また地域の人たちに笑顔をお届けしたい」という想いから、各地で体験教室を開催しています。会場では「笹を立てるのが意外と難しい!」と苦戦しながらも、お隣同士で教え合う温かい光景が見られました。子どもから大人までが夢中で手を動かし、最後には「きれいにできた!」「おいしそうにできた!」と満足げな笑顔が広がる、楽しい時間となりました。

令和8年1月8日 富山ます寿し協同組合の「ます寿し作り体験教室」での様子

ます寿し
レシピのご紹介

ます寿しには、開いた時に魚が上にくる「表置き」と、
ご飯が上にくる「裏置き」があります。
今回は、曲げわっぱの底に魚を敷く
「裏置き」の作り方をご紹介します。

1. 下準備
鱒を少し厚めにスライスし、塩と酢で締めます。酢飯も用意しておきましょう。
2. 笹を敷く
つるつるの面を上にし、45度ずつ円を描くように曲げわっぱへ並べます。重なりすぎないのがコツ!
3. 鱒を並べる
容器の円に合わせ、隙間なく重ならないようにきれいに鱒を敷き詰めます。ここが仕上がりの美しさを決めます。
4. 酢飯をのせる
酢飯を広げ、ます寿しを切った時に厚みが均一になるよう平らにやさしく押さえます。
5. 包んで押す
最後に立てた笹から順に包み、体重をかけてしっかりと手押しします。
さらに、重石を乗せて押すことで、鱒と酢飯をなじませます。
6. 仕上げ
上下を竹の棒ではさんで、強めにゴムをかけたら完成です!
一晩寝かせると味が馴染んで、ちょうど食べごろに。